・飛行機
飛行機に乗った。そのときの不思議なふわふわとういたかんじがまだ残っている。
地形を見るのがとても面白いと思う。飛行機にのるたびに。
今日は澄みわたる晴れ空だったおかげで、福岡から国東半島、四国、瀬戸内海としっかりみえた。
国東半島はみていておもしろかった。真ん中からなにかが吹き出して、それがあふれ流れ出たものがそのまま固まったようだった。
そうしてできた地形の、山の隙間に詰め込むように家や田畑が広がっていた。
とても縦長の隙間に詰め込むのがなんだかおもしろくて。
しばらく眺めていた。
離島はさらに面白かった。
島のわずかな平地、外側のへりに沿うようにちまちまと家がたっていて、ケーキのふちに飾りつけをしたようになっていて。
それが自然にそれを選んだのだな、という感覚があった。どれだけ人間が開発するちからがあっても、地形に沿って、地形にしたがって生きているのだなと。
ただ、福岡の平野は、福岡市から大野城あたりまで、なにかでなぎはらったのかのようにたいらですこし怖かった。これだけ山だらけの地形で、一部だけあまりに平らだったから。
もちろんそんなことはないだろう。平野は自然にできたもので、そこに人々が集まっているだけで、そこを人間がなぎはらったなんて、そんなゴジラじゃあるまいし。
ただなんとなーく、あっ、ゴジラが歩いたのかなと、そう感じた。
・チケット
あっ。そういえば栃木に行くんだった。チケットとらなきゃ。
そう考えて、テキトーに今日の朝イチの飛行機で行き、次の日の遅めの飛行機で帰るチケットを買った。
ネットでポンポン買っても、ちゃんと席がとれるもんだなとなぜか感心した。
インターネットの予約で、間違ったり、予約してたのにとれてなかったり、そんなことはいままでなかった。
だけどとてもフワフワしてるので。
価値も存在もなにもかも。
だもんで飛行機とかいう、クソデカイしセキュリティ厳重な、重圧感放ってる物体の乗車券がこんなあっさりでいいのかなぁ、という謎の不安があって。
でも現実なのだ。
ちゃあんと、色んなセキュリティをとおって、もし俺が、「おいおい、こんなので予約がとれるとかうそっぱちだろ、キャンセルしちまえ」と開き直ったにしても、必ず請求が行くように、出来ているのだ。
・現実
現実感がない。
高校時代の、唯一の知り合いもそんなかんじだった。
唯一の、というと誇張だろうが、他の知り合いからは避けられたりなんたり、あとはゲームをするだけの仲だったり、そんな感じで、Twitter上にはまだいるけれども、実際に会う知り合いはほとんどいない。
だからだろうか。
そもそも高校自体が、現実だったのか今でも不思議だ。
自分は高校(正確には高専だが)を辞め、そのため同窓会名簿にも載らないし、個人的に呼んでくれるほど好かれていたとも思えない。
だもんで、高専に関する何かに触れることがほとんどなく、思い出すきっかけもなく。
だから人生でそこだけ、途切れている別世界のような感覚があるのだ。
世界線を飛んだような感覚。地続きだった小学校、中学校から一気に高専に飛び、そうしてまた、一気に大学にとんだ。
だからいくらわかっていても、飛行機で飛んでいるときみたく、今見ている景色がちゃあんとした現実で、今見ている地形が自分のすんでいるところだと言われても、なんとなく別世界なのだ。
そんな、高校自体がフワフワしているところに、さらにフワフワとした存在がヤツだった。
攻殻機動隊を教えてくれたヤツは、俺と仲良くなって、ケンカして、そのタイミングですぅッと消えた。
本当に消えたのだ。
なんの予兆もなしにじわっと学校から消え、SNSのアカウントすら消え、ヤツを証明するものがほとんど消え、すぐに半年すぎた。
とてもあっさりしているが、僕もヤツの存在がフワフワしていたからか、特に気にならなかった。
あっ、消えたんだなぁ。
そんなかんじだった。
だがヤツはもう一度、半年後にこれまた予告なしに突如学校に復帰した。
そうしておれはヤツとまた再会したわけだが、ヤツはどこにも居座らず、どこかしこに色んなコミューンがあって、流浪の存在だった。
だから結局、またしても学校を辞め、そうして二度と現れなかった。
ほどなくして成績不振につき高専を辞め、大学に言った俺はそんなヤツのことも、どーも現実感がない謎の思い出として浮いたままになっていた。
そんなヤツもちゃんとやっぱり生きていたみたいで、東京で生きていることがようやくわかり。
ちゃんとした現実として顔を合わせる。
あー、現実なのかー、と、いまだ不思議な感覚だ。
まだフワフワと浮いている。
東京という初めてくる街のことも、羽田空港も、飛行機も、ふわふわとしてる。
それがしっかりと形になっていくのだろう、今日これから。
自分の体験を通じて。
まあ何はともあれ、東京、栃木、楽しんで参りますよ。
それはまぎれもなく、ちゃんとした現実です。